一般社団法人 日本肉腫学会
理事長
亀田総合病院
肉腫総合治療センター(センター長)
肉腫科(部長)

理事長挨拶
日本肉腫学会は2015年12月3日に非営利の一般社団法人として設立しました。
年1回開催される総会には、毎年11月末から12月第1週に診療科と分野を超えた肉腫治療のエキスパートが集まり、新しい治療成績や新たな研究成果を発表します。患者様、ご家族様も学会員や代議員になれる恐らく我が国では初めての学会です。医療者や研究者と同じパネルで患者様、ご家族代表のポスター発表も行われます。2015年12月京都で学会設立の記念シンポジウムが開催され、年次学術集会は2021年11月20日にWEB形式で行われる会議で6回目を数えます。
2016年12月にはがん対策基本法改正法が成立し、患者数の少ない希少がんや治癒が特に困難である難治がんについて、疾患本体の解明および革新的な予防・診断・治療法開発の促進が法律によって定められました。肉腫はまさに両方に当てはまる「がん」です。2017年9月からは、大学院教育である「がんプロフェッショナル養成プラン」のカリキュラムの中心に肉腫を含む希少がん教育が置かれることになりました。
日本肉腫学会はそのミッションとして、患者様やご家族様、認定施設や基幹病院の協力を得て、1)肉腫治療のための知識や技術を若い世代の医療者に伝え、一人でも多くの肉腫の専門医師や医療スタッフを養成し、2)有効な薬物治療に乏しい肉腫患者様の新しい治療薬を開発するために、肉腫のゲノム解析を強力に推進します。
多くの医療者、患者様、ご家族様、企業関係者の皆様のご参画をお待ちしております。
役員および代議員 一般社団法人 日本肉腫学会 (JSA)
理事長
高橋 克仁
亀田総合病院、肉腫総合治療センター長、肉腫科部長
理事・役員
大野 烈士 亀田総合病院、腫瘍外科部長
小西 郁生 京都大学名誉教授
中村 清吾 昭和大学病院、ブレストセンター、特任教授
佐々木 康綱 洛和会音羽病院、腫瘍内科部長、昭和大学名誉教授
楢原 啓之 兵庫県立西宮病院、化学療法センター長、腫瘍内科部長
小池 幸宏 渕野辺総合病院副院長、内科部長
橋本 拓哉 日本赤十字社医療センター、肝胆膵・移植外科部長
滝田 順子 京都大学大学院医学研究科、発達小児科学教授
矢嶋 淳 亀田総合病院、腫瘍外科、肉腫科部長代理
樋口 肇 国際医療福祉大学成田病院、腫瘍内科部長、臨床腫瘍学主任教授(監事)
名誉理事
寺岡 慧 東京女子医科大学名誉教授
幕内 雅敏 東京大学名誉教授、日本赤十字社医療センター名誉院長
代議員 医療者 25名、患者及び患者家族 10名
このような学会のスタイルが定着したのは、法人設立までの10年間の我が国の肉腫医療の事情によります。肉腫は整形外科が原発腫瘍の手術を担当する四肢の骨軟部肉腫とそれ以外の診療科が手術を担当する頭頸部、胸部腹部内臓、後腹膜、骨盤部の軟部肉腫の2つに大別されます。軟部肉腫は肉腫全体の85%を占め、骨・軟骨肉腫は15%です。成人軟部肉腫の約60%が頭頸部、胸部腹部内臓・後腹膜、骨盤部に発生します。軟部肉腫は我が国の院内がん登録の集計では、毎年新たに3.6人/10万人が発症します(人口1億人換算で3600人)。毎年の発症患者数が6人未満のがんを希少がんと呼び、肉腫は希少がんの代名詞です。肉腫の患者数は全悪性固形腫瘍の2%程度です。
我が国の肉腫医療においては、成人の胸部腹部内臓・後腹膜、骨盤部の軟部肉腫の再発転移例に対する外科的治療、薬物治療、局所制御治療の体系的な診療体制が存在していなかったのです。特に、成人の胸部腹部内臓・後腹膜、骨盤肉腫再発例を経験豊富な技術を持って手術できる外科医は私の知る限り日本にいませんでしたので、私たちは学会設立までの10年間に、その技術をもつ外科医の専門家集団を養成しました。癌の手術と肉腫の手術は多くの点で異なります。
私たちの歩みは、成人軟部肉腫の過半数を占める頭頸部、胸部腹部内臓・後腹膜・骨盤部肉腫の再発転移例の患者様の治療を巡る文字通り「壮絶な」闘いの歴史です。私個人でもこの領域の2000例を超える肉腫患者様の診療に関わってきましたし、本学会の初代指導医の認定を受けた医師の多くは、標準治療と診療体制のない道無き道をお互いの背中(技術)を頼りに連携し、それぞれが200〜500人の肉腫患者様の集学的治療を進めてきた、いわばこの分野の「草分け」とも呼べる先生方で、日本肉腫学会はこれらの先生方のご尽力によって設立されました。
そして、この肉腫医療を進めるにあたって患者様とご家族様の大きな貢献がありました。米国の国立アーリントン墓地に、ジョン・F・ケネディ大統領の弟、ロバート・F・ケネディ元米国司法長官が眠っています。その墓の前にある水槽には、水滴が垂らされ、水面にはその波紋が広がります。“小さな水の波紋が静かに広がって行くように、一人が勇気と信念を持って立ち上がったとき、その希望は多くの人に伝播し、やがては大きなうねりになる”という彼の信条を示していると言います。
日本の肉腫医療の現状に一石を投じ、多くの患者様に希望を与えた2人の患者様がいました。お一人は東京都の大西カジャさん(享年40歳)、もうお一人は岡山県の米澤京子さん(享年34歳)(お二人は生前から実名を公開しておられましたのでそのまま使わせていただきました)で、お二人とも後腹膜原発の平滑筋肉腫の患者様でした。大西さんはカナダの大学を卒業し英語が堪能で、日本青年会議所では女性で初めてのチーフセクレタリーとして活躍し、麻生太郎元首相とも面識がありました。また、上記ロバート・F・ケネディ司法長官の息子、ロバート・F・ケネディ・Jr来日時には通訳を務めました。大西さんと米澤さんは、我が国で初めての肉腫患者様のグループ“Cure Sarcoma”を立ち上げました。“Cure Sarcoma”は現在、NPO法人となり大西カジャさんのご主人である大西啓之さんを代表として発展しています。米国の肉腫患者会や肉腫専門医との交流を通して、肉腫医療の様々な新しい情報を日本の患者様に伝え、政府や医療者に積極的に働きかけ、肉腫の診療体制の確立を訴えました。
2007年から2009年にかけて、大西さんや米澤さんを中心に集まった多くの患者様の再発転移肉腫の治療を担当した外科、薬物治療、局所制御治療の専門医師が1年に1回集まり、患者様やご家族様を招待して小さな勉強会が始まることになりました。2014年12月には、日米の肉腫専門医師がホノルルに集まり、11名の患者様、ご家族様の代表を招待して、「肉腫の研究と治療に関する日米国際ワークショップ」を開催しました。このワークショップは日本肉腫学会(Japan Sarcoma Association; JSA)設立のキックオフミーティングと名付けられ、初めて公に日本肉腫学会の設立が発表されました。2007年に始まった小さな勉強会は、2015年11月30日と12月1日に京都で開催された「日本肉腫学会設立記念シンポジウム」へと繋がったのです。

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患者様お一人おひとりについて、腫瘍の発生や治療法の選別に関わる遺伝子異常の検出、個別化免疫治療につながるネオアンチゲンの同定など、ゲノム解析研究が一人でも多くの肉腫・GIST・希少がんの患者様の治療に届きますように!